実習実施者とは?技能実習における関係者について解説

実習実施者とは?技能実習における関係者について解説

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実習実施者とは?

実習実施者とは?

技能実習生の受け入れをご検討であれば、頻繁に「実習実施者」という言葉を目にされているのではないでしょうか。

この記事では、実習実施者とは何か、実習実施者にはどんな役割があるかについて解説していきます。
技能実習生の受け入れをお考えであればぜひご一読ください。

外国人技能実習制度について

外国人技能実習制度について、まず簡単に振り返ります。外国人技能実習制度とは、日本の技能や技術、知識を教えて世界の人材育成に貢献するための制度です。
「外国から労働力を確保する制度」と誤解されることがありますが、そうではなく、主に途上国の将来を担う人材を、育成するために作られた制度です。

実習実施者とは

実習実施者とは前述の技能実習を行う法人、もしくは個人です。「技能実習生の受け入れ企業=実習実施者」という解釈で問題ありません。

実習実施者の役割

実習実施者の役割

実習実施者(=技能実習生の受け入れ企業)には、安全な環境で適切に技能実習を行う義務があります。そのため実習実施者には以下の役割を果たすことが求められています。

1.技能実習計画の認定申請
どのように実習を行うかの計画を、実習生ごとに作成して申請します。

2.実習実施者の届出
技能実習計画の認定後、実習実施者届出書を、外国人技能実習機構(※)に提出しなければなりません。
(※外国人技能実習機構とは、技能実習を正しく実施できるようにしたり、技能実習生を保護したりすることを目的にしている組織)

3.帳簿書類の作成と保管
実習実施者には、受け入れた技能実習生の名簿や履歴書、雇用契約書などを作成して1年間保管する義務があります。

4.実施状況報告
技能実習の実施状況を、外国人技能実習機構に報告することが義務付けられています。

5.技能実習責任者、技能実習指導員、生活指導員の選任
技能実習の責任者、実際に技能実習を行う実習指導員などの選定も必要です。

6.技能実習生の待遇の確保
適切な額の報酬と、宿泊施設の確保をします。

以下項目で詳細を解説していきます。

技能実習計画の認定申請

技能実習生を受け入れるためには、まず「技能実習計画書」の作成が必要です。
技能実習計画書とは、文字通り、どのように実習を行うかなどをまとめた技能実習の計画書で、それぞれの実習生ごとに作成します。
この技能実習計画書は管理団体の指導のもと、技能実習法などの関連法令に従って作成します。

作成後、外国人技能実習機構のチェックがはいり、問題がなければ認定を受けられて申請完了となります。

技能実習計画書に記載する内容や、申請の際の添付書類は技能実習法などで定められています。
煩雑になりますので、主な記載事項や添付書類、認定基準、実習内容とその条件等について簡潔にまとめます。

記載内容

受け入れ企業側の情報
・申請者の氏名・住所
・技能実習を行う事業所の名称・住所
・(団体監理型の場合)監理団体の名称・住所・代表者名など

技能実習生側の情報
・技能実習生の氏名・国籍
・技能実習の目的や内容、期間
・労働時間、休日、宿泊施設など

添付書類

申請手続きに関する書類
・申請者の概要書
・登記事項証明書や直近2年度の損益計算書、法人税の確定申告書
・写真付きのフロチャートなど

技能実習生に関する書類
・技能実習生の申告書、履歴書
・外国の所属機関の証明書、概要書
・申請者の誓約書など

認定基準

・習得する技能が、技能実習生の母国で修得困難であること
・技能実習の修了までに、技能検定や技能実習評価試験等で、しっかり評価を行うこと
・事業所ごとに、技能実習の実施責任者を選任していることなど

実習内容とその条件

①必須業務
習得しに来ている業務のことです。
これが全実習時間の2分の1以上を占めねばなりません。

②関連業務
習得する技能の向上に直接、または間接的に役立つ業務のことです。
実習時間全体の2分の1以下でないといけません。

③周辺業務
必須業務に従事する場合に、通常携わる業務のことです。(②を除く)。
実習時間全体の3分の1以下でないといけません。

またそれぞれ、従事させる時間のうち10分の1以上を、安全衛生の業務に充てないといけません。詳細はこちらの新たな外国人技能実習制度の概要でも確認できます。

実習実施者の届出

技能実習計画の認定を初めて受けた場合は、速やかに「実習実施者届出書」の提出が必要となります。提出先は外国人技能実習機構の地方事務所・支所となります。
この「実習実施者届出書」が受理されると、実習実施者届出受理書が交付されます。
この書類記載の「実習実施者届出受理番号」は今後の申請で使いますので保管が必要です。

届出に必要な書類は、外国人技能実習機構のページの実習実施者届出書をご利用ください。

実施状況報告

実習実施者は毎年1回、技能実習の状況を報告しないといけません。
具体的には、4月1日〜翌年3月31日までの期間の技能実習の状況を「実施状況報告書」にまとめ、外国人技能実習機構の地方事務所・支所に提出します。

作成方法と注意点については、実施状況報告書作成要領に、細かく記載がありますのでご参照ください。

帳簿書類の作成と保管

帳簿書類の作成と保管

実習実施者には、以下に記載する帳簿書類の作成が求められます。

①技能実習生の管理簿
受け入れた技能実習生の名簿や履歴書、雇用契約書、雇用条件書、賃金台帳などです。
②認定計画の履行状況に係る管理簿
③技能実習日誌
技能実習生の業務内容や、指導の内容を日々記録したものです。
④(その他特定の職種・作業の場合)厚生労働大臣・法務大臣が告示で定める書類

以上の帳簿書類を作成し、技能実習が終了した日から1年間、保管しなければなりません。

ちなみに企業単独型実習実施者では、入国前講習と、入国後講習の実施状況を記録した書類の保管も必要です。

実習実施者受け入れ企業の体制の整備

実習実施者は、技能実習を行う上での役割決めをする必要があります。
具体的には「技能実習責任者」「技能実習指導員」「生活指導員」を選任します。
以下でそれぞれの役割について解説いたします。

技能実習責任者

技能実習責任者は、文字通り、技能実習全体の責任者です。
技能実習の管理・監督を行い、事業所ごとに選任されます。
具体的な仕事内容は、技能実習に関わる職員の監督、及び技能実習の進捗状況の管理などです。

技能実習指導員

技能実習指導員は技能実習の指導を行います。
修得させようとする技能について、5年以上の経験がある常勤職員から選ばれます。

生活指導員

生活指導員の役割は、問題の発生を事前に防ぐことです。
具体的には、技能実習生の相談に乗ったり、日本での生活における管理や指導を行ったりします。
技能実習を行う事業所ごとに、常勤職員の中から選ばれます

技能実習生の待遇の確保

技能実習を適切に行うため、「報酬」や「宿泊施設」に関しても、ルールが定めれれています。

報酬

実習実施者は、技能実習生という理由で、不当に報酬の額を低くしてはなりません。

また技能実習生と、同程度の技能を持つ日本人労働者がいる場合、
・職務内容と責任の程度が、日本人労働者と同等であること
・報酬は、その日本人労働者の報酬額と同等以上であること
以上2点の説明をしなければなりません。

宿泊施設

実習実施者は、適切な住まいを確保しなければなりません。
「寝室については床の間・押入を除き、1人当たり4.5m以上を確保しないといけない」など細かく基準が設けられてます。
詳細は技能実習制度 運用要領をご参照ください。

監理団体の役割

監理団体の役割

ここまで実習実施者について説明させていただきましたが、この章では実習実施者が、適切な技能研修を行っているかを監査・指導を行う監理団体について解説します。

監理団体とは?

監理団体は、技能実習生の受け入れや、受け入れ企業へのサポートをする非営利団体です。
具体的な業務を例示すると、海外での技能実習生の募集、調整、各種手続きなどと、受け入れ後は、受け入れ企業(=実習実施者)が適切な技能実習を行っているか監査と指導を行います。

管理団体が管理事業を行うには、財産的基礎がしっかりしているかなど、技能実習法で定められた要件に適合してなければならず、また主務大臣(法務大臣、厚生労働大臣)に許可を受ける必要があります。

以下の項目で、管理団体の仕事の詳細を説明します。

技能実習計画の作成指導

監理団体は、技能実習計画の作成について、意見を提示したり、説明して指導したりすることが求められます。

入国後講習の実施

技能修得1年目の実習(第1号技能実習と呼びます)の場合、講習を行う必要があります。
第1号技能実習では入国後、一定期間、日本語や日本での生活一般に関する知識などの講習の受講が必要です。

監査・訪問指導

監理団体は実習生に、知識を習得させるため動きながらも、実習監理も行わなければなりません。
実習監理は①定期監査、②臨時監査、③訪問指導の3つです。

①定期監査
3か月に1回以上行われる監査です。
技能実習計画通りに技能実習が行われているか、技能実習法や、労働関連法令に違反してないかチェックします。
②臨時監査
重大なルール違反があった場合や、労働災害を発生させたなど、労働関係法令に違反している疑いがある場合に、行われる監査です。
③訪問指導
実習1年目の第一号技能実習の期間の場合には、月に1回以上訪問指導をします。

監理団体は、監査の結果を監査報告書にまとめて、外国人技能実習機構に提出します。
もし違反等があった際には、外国人技能実習機構、もしくは労働基準監督署に、通報する義務があります。

母国語相談窓口

監理団体は、技能実習生が、母国語で相談できる体制を整備する必要があります。
例えば、技能実習生が人権侵害行為を受けている場合や、何らかの理由により、技能実習指導員や生活指導員などの、役職員に相談できない場合に、技能実習生を保護・支援できるようにするためです。

まとめ

まとめ

実習実施者について、お分かりいただけたでしょうか。最後に、説明させていただいた内容を、簡単に振り返ります。

実習実施者は特定技能受け入れ企業とほぼ同義です。実習実施者(=受け入れ企業)は、安全な環境で、適切に技能実習を行う義務を負ってます。そのため、技能実習の計画を作成したり、実施状況を報告をしたりするなどの義務を負っています。

また実習実施者は、体制の整備として、技能実習の責任者である技能実習責任者、技能実習の指導を行う技能実習指導員、問題発生を未然に防ぐ生活指導員の任命をする必要があります。
また技能実習生のために正当な額の報酬や適切な宿泊施設の確保も必要です。

手続きの流れとしては、実習実施者はまず技能実習計画の認定申請を行います。初めて認定を受けた場合には「実習実施者届出書」を、外国人技能実習機構に提出する必要があります。実施状況の報告は、毎年1回「実施状況報告書」にまとめて提出をします。

最後に、監理団体について簡単にまとめます。
監理団体は、海外での技能実習生の募集、調整、各種手続き、また受け入れ企業(=実習実施者)が適切な技能実習を行っているか、監査と指導を行います。
具体的には技能実習計画の作成指導、入国後講習の実施、監査・訪問指導をしており、実習監理として、①定期監査、②臨時監査、③訪問指導の3つを行います。

以上になります。
この記事が技能実習生受け入れの一助になれば幸いです。

この記事を書いたライター
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外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。