漁業業界で特定技能外国人を採用する方法

漁業業界で特定技能外国人を採用する方法

ニュース・特集外国人雇用特定技能

特定技能「漁業」とは

特定技能「漁業」とは

特定技能「漁業」とは、漁業・養殖業界の人手不足を解消するための制度です。
今後も深刻な労働力不足が続く業界のため、最大6300人もの特定技能外国人の受け入れを予定しています。現在、多くの沿岸部エリアで、受け入れが積極的に検討されています。

導入に当たっては注意すべき点がいくつかあります。
例えば養殖では、一定の知識を有する特定技能1号の受け入れができますが、業務内容によってはより専門的な知識を有する2号の受け入れになります。このように漁業か養殖か、そのどちらのどの業務かによって、1号受け入れか2号受け入れか変わりますので、制度をよく理解した上での対応が求められます。
漁業分野で、特定技能外国人の受け入れをご検討されている場合には、ぜひご一読ください。

漁業の現状と、特定技能が許可されたワケ

人手不足

漁業業界も少子高齢化や後継者問題により、深刻な人手不足に陥っています。
水産庁の「漁業就業構造等の変化」によると、漁業従事者は一貫して減少していて、1988年から2018年までの30年間で、61%減少、2018年度の時点では15万1,701人です。その一方で、漁業従事者の65歳以上の割合は、平成の31年間ずっと増加傾向でした。
つまり仕事の厳しさや、収入の不安定さなどもあり漁業従事者が猛スピードで減少し、高齢化が進んでいるわけです。
水産庁の平成31年3月時点のデータでは、漁業分野の有効求人倍率は、 漁船員が2.52 倍、水産養殖作業員が2.08 倍です。平成31年度の全業界の平均の有効求人倍率は1.63倍であることをみると、労働力の確保は喫緊の課題であることが明らかです。

生産性が向上したため

農林水産省は、人手不足の問題が深刻化しているため、生産性を向上させる目的でロボット、AI(人工知能)、IoT等の先端技術の導入支援を行っています。それだけではなく、それら技術の橋渡し役であり、「分析」「開発」「運用」等の工程を代わりにやってくれるシステムインテグレーター(SIer)との接点を作るように動いてもいます。
これら技術の導入で、漁業業界にも変革が起きており、最新技術の導入でどんどん効率化が進んでいます。
水産庁の水産をめぐる事情についてによれば日本の漁業者1人当たりの漁業生産量は27.6トンですが、韓国は30.3トン、ノルウェーは214.5トンと、世界の中ではまだまだ多いほうとは言えません。最新技術の導入を進めることで、漁業者1人当たりの漁業生産量はまだまだあげられると考えられており、資金や人材をどんどん投入するべき分野だと認識されてもいます。

特定技能で対象としている業務内容

漁業

特定技能「漁業」では漁業と養殖業に分けられ「漁業」で対象となっている業務は、以下の通りです。

  1. 漁具の製作、補修
  2. 水産動植物の探索
  3. 漁具、漁労機械の操作
  4. 水産動植物の採捕
  5. 漁獲物の処理、保蔵
  6. 安全衛生の確保

漁業の場合は、漁具の製作や補修から、魚群の探索などに用いる漁労機械の操作などまで、幅広い業務を行えます。陸上で行う魚介の処理や保蔵、安全衛生の確保などを行っても問題ありません。かなり幅広い業務を行うことができます。ですが、船長や漁労長などの立場の業務はさせることができません。

養殖業

養殖業では、以下の業務内容が対象です。

  1. 養殖資材の製作、補修、管理
  2. 養殖水産動植物の育成管理、収獲、処理
  3. 養殖水産動植物の収獲、処理
  4. 安全衛生の確保

養殖資材の製作や補修、海藻や魚介類などの養殖水産動植物の育成などに従事することができ、養殖に用いる動植物の収穫や処理、安全衛生の確保などを行うこともできます。
漁業と同様に、養殖業の管理者などの立場の業務をさせることはできません。任せた場合には特定技能外国人の在留資格が取消されたり、受け入れ企業側が不法就労助長罪に問われたりする可能性があります。

関連業務に関しては細かいルールは定められていません。
同じ業務を行う日本人が通常行う業務であれば問題なく、例えば漁具・漁労機械の点検や、換装や船体の補修・清掃などが可能で、⿂市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分けなどにも従事できます。

雇用形態・報酬※

雇用形態

漁業分野では、特定技能の業界では珍しく、特定技能1号外国人を直接雇用だけではなく、派遣形態でも雇用できます。
漁業分野には繁忙期や閑散期があり、閑散期にはほか地域に手伝いに行くなどの漁業現場のニーズに対応できるようにするため、派遣での受け入れができます。
ですので忙しい期間のみ雇い入れるなどの融通を効かせた採用が可能です。

ただ、もし外国人材を、派遣事業者から派遣してもらう場合には、派遣事業者と労働者派遣契約を結ばなければなりませんので、注意が必要です。

報酬※

報酬は当然、日本人と同じ額を支払わねばなりません。能力で差をつけることはできますが「外国人である」ことを理由に低賃金にすることは、外国人差別になりますのでできません。
そのため特定技能外国人を雇うにあたって受け入れ先企業は「日本人の報酬と同じ、もしくはそれ以上であること」を文章で作成し特定技能外国人に示す必要があります。
ちなみに「日本人の報酬と同じ」とは、最低賃金などを含む日本人の賃金規定がある場合には特定技能外国人にも適用するという意味になります。

特定技能「漁業」を取得するためには?

特定技能「漁業」を取得するためには?

特定技能「漁業」を取得するためには、技能実習生から移行する方法と試験を受ける方法の2つがあります。

2号技能実習を良好に修了※

技能実習2号までを良好に修了している場合には、必要な技能水準・日本語能力水準を満たしていると判断され、技能試験・日本語試験なしで1号特定技能に移行できます。
ちなみに「良好に修了」とは技能実習を2年10ヵ月以上で修了し、技能検定3級に合格していることです。
対象の技能実習2号は以下の通りです。

①漁業

漁船漁業職種8作業:

  • かつお一本釣り漁業
  • 延縄漁業
  • いか釣り漁業
  • まき網漁業
  • ひき網漁業
  • 刺し網漁業
  • 定置網漁業
  • かに・えびかご漁業

養殖業

養殖業職種1作業:

  • ほたてがい・まがき養殖作業

技能試験&日本語試験に合格※

技能実習2号を修了していない場合は試験を受けて合格点を取る必要があります。
受験資格は、試験日に満17歳以上であり在留資格を有していれば得られます。
試験は漁業分野で業務を行うのに問題ないか確認するため、「日本語能力を測る試験」と「技能を測る試験」の2つが科されます。

日本語試験

日本語試験には2種類あり、国際交流基金日本語基礎テストと日本語能力試験で、どちらかで合格点が必要です。

技能測定試験

漁業の技能測定試験は「一般社団法人大日本水産会」が実施します。
「漁業」と「養殖業」のカテゴリー別に試験は実施されます。
コンピューター・ベースド・テスティング(CBT)方式、もしくはペーパーテスト方式で行われます。

試験は学科試験と実技試験の合計55問で、学科試験も実技試験も選択式の試験です。
実技試験は、「実技」とはありますが、図やイラスト等から器具や設備、養殖生産物の適切な取り扱いができるかを判断するペーパーテストです。

試験の詳細は、一般社団法人大日本水産会のページにありますので、ご参照ください。

特定技能「漁業」外国人を採用するには

特定技能「漁業」外国人を採用するには

受け入れ先企業が、特定技能外国人と雇用契約を結ぶためには、下記のAとBの二つを満たさねばなりません。

漁業特定技能協議会への加入

特定技能1号外国人を受け入れてから、4か月以内に「漁業特定技能協議会」に加入する必要があります。所属する業界団体に申請書を提出すれば、漁業特定技能協議会から証明書の公布を受けられます。

この「漁業特定技能協議会」とは、水産庁が設けた組織で、漁業分野の特定技能制度の適切な運用を図ることを目的にしています。例えば不正行為の横断的な再発防止を行ったり、現在の外国人材の受け入れ状況をまとめたり、漁業業界のための活動を行っています。
可能な限りこの「漁業特定技能協議会」には協力しなければなりません。

支援体制を整える※

特定技能外国人と直接雇用契約を結ぶためには、日本での生活に困らないように義務的支援を行わねばなりません。
具体的には、入国前の事前ガイダンスをはじめ、出入国送迎、生活オリエンテーション、日本語学習、相談苦情対応などの支援です。過去2年間、外国人材の受け入れ実績がない場合には、登録支援機関に委託する必要があります。

雇用にかかる費用は?

特定技能外国人を雇用する場合の費用目安をまとめます。

給与は前述の通り、日本人と同等以上の額を支払わなければなりません。また給与とは別に、登録支援機関へ委託するのであれば支援委託料や、在留資格申請費用などがかかります。
特定技能外国人の採用前、採用後にかかる費用をそれぞれ以下にまとめます。

採用前にかかる費用

送り出し機関への手数料
海外から呼び寄せる場合、20〜40万円ほどです。
人材紹介への手数料
年収の10%〜30%が目安で、年収300万円なら30〜90万円です。
在留資格申請に関する委託費用
申請取次を行政書士法人・登録支援機関に委託する場合の費用です。
だいたい10~20万円です。

採用後にかかる費用

登録支援機関への支援委託費用
日本で生活する上での、義務的支援を登録支援機関に委託した場合、1名につき〇〇円と発生します。
月額、一人当たり2〜3万円ほどかかり、年間で約24〜36万円です。
在留資格更新申請に関する委託費用
こちらも委託した場合、1年に1度、在留期間更新のため出入国管理庁へ更新申請するためかかる費用です。

漁業分野の特定技能1号の活用法

漁業分野では、特定技能1号を取得している外国人は、ほとんど技能実習2号からの移行です。そのため技能実習生からの移行を狙っていくのが王道となります。
前述のとおり特定技能を取得するためには、技能試験と日本語試験に合格しなければなりませんが、技能実習の場合には、企業の求人に合格するだけで来日できるためです。
また海外試験は実施されていますが、試験に合格した外国人はほとんどいないのが現状です。

まとめ

まとめ

今回の記事の内容を簡単に振り返ります。

概要と漁業の現状

特定技能「漁業」とは、漁業・養殖業界の人手不足を解消するための制度で、最大6300人もの特定技能外国人の受け入れを予定しています。現在、漁業業界は深刻な人手不足に陥っており、1988年から2018年までの30年間で61%も漁業従事者は減少し、2018年度の時点ではわずか15万1,701人となっています。その一方65歳以上の割合はずっと増加傾向で、漁業分野の有効求人倍率は 漁船員が2.52 倍、水産養殖作業員が2.08 倍です。そのため人材不足の緩和は喫緊の課題です。

業務内容

特定技能「漁業」は漁業と養殖業という二つのカテゴリーに分けられており、「漁業」では、①漁具の製作、補修、②水産動植物の探索、③漁具、漁労機械の操作、④水産動植物の採捕、⑤漁獲物の処理、保蔵、⑥安全衛生の確保を行うことができます。
一方「養殖業」では、①養殖資材の製作、補修、管理、②養殖水産動植物の育成管理、収獲、処理、③養殖水産動植物の収獲、処理、④安全衛生の確保に従事できます。

関連業務に関しては細かいルールは定められておらず、漁具・漁労機械の点検や、換装や船体の補修・清掃などが可能で、⿂市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分けなどもできます。

雇用形態と受け入れ方法

雇用形態は派遣でもOKです。漁業には繁忙期や閑散期があり、閑散期にはほか地域に手伝いに行くなどができるよう派遣での受け入れが可能となってます。
特定技能「漁業」を取得するためには、技能実習生から移行する方法と試験を受ける方法の2つがあり、採用に当たっては漁業特定技能協議会へ加入することと、支援体制を整えることの2点が必須となっています。

費用

雇用に当たっては採用前に送り出し機関への手数料(約20〜40万円)、人材紹介への手数料(年収の10%〜30%)、在留資格申請に関する委託費用(約10~20万円)、採用後には
登録支援機関への支援委託費用(年間で約24〜36万円)、在留資格更新申請に関する委託費用がかかります。

この記事を書いたライター
最新情報をメールでお届けします

カナエル運営事務局

外国人材に関わる方向けに情報を発信する総合メディア「カナエル」の中の人です。 外国人採用をはじめ、特定技能・技能実習に関する有益な情報を発信します。