【特定技能】フィリピン人を採用するステップ・注意点を解説。

【特定技能】フィリピン人を採用するステップ・注意点を解説。

特定技能

  • 手続きが複雑で分かりづらい
  • 関連機関が多く制度の全体像を把握するのが大変
  • はじめてフィリピン人を雇い入れるが注意すべき点はあるのか

はじめて特定技能制度を利用する方には、手続きが複雑で分かりにくいものです。 この記事では、このような悩みや不満をお持ちの方に向けて、過去に7名のフィリピン人を特定技能として雇い入れた経験と、隈なくリサーチした結果から徹底解説します。

【ケース別】採用までの各ステップを解説

【ケース別】採用までの各ステップを解説

はじめに、採用までの各ステップで受け入れまでの全体像を解説します。 特定技能制度を利用してフィリピン人材を採用するには、以下の手続きが必要です。

【STEP1】送り出し機関と契約

フィリピン政府から認定を受けた送り出し機関と、人材募集や雇用に関し取り決めを実施して契約します。

【STEP2】必要書類の準備・提出

受け入れ企業は必要書類をPOLOに提出し、所定の審査を受けたのちにPOEAに雇用主として登録されることが必要です。

【STEP3】POLOと面接

受け入れ企業は、POLOで労働担当官による英語での面接を受けます。面接の結果、雇用主として適正であると判断された場合、POLOから認定印が押印された書類一式と推薦書が発行されます。

【STEP4】POEAへの登録

受け入れ企業は、送り出し機関を通じてPOLOから発行された書類一式をPOEAに提出が必要です。ここでの手続きが完了すると、求人情報が登録されます。

【STEP5】雇用契約を締結

受け入れ企業は、送り出し機関等から紹介された人材と特定技能に関する雇用契約を結ぶことが必須です。

【STEP6】在留資格認定証明書の交付

受け入れ企業は出入国在留管理庁に対し、在留資格認定証明書の交付を申請します。(在留資格認定証明書には有効期限が3か月のため、【STEP6】以降の手続きを期限内に進める必要です)

【STEP7】査証(ビザ)発給申請

人材は在フィリピン日本国大使館にて在留資格認定証明書を提示し、特定技能として来日するための査証(ビザ)の発給を申請します。

【STEP8】出国前オリエンテーションの受講

人材は、フィリピン海外労働福祉庁(OWWA)にて出国前オリエンテーションの受講が必要です。

【STEP9】健康診断の受診

人材は現地にて、指定の健康診断を受診します。

【STEP10】海外雇用許可証(OEC)の発行申請

人材は、送り出し機関を通じてPOEAにOECの発行の申請が必要です。

【STEP11】特定技能として入国

ここまでの手続きが完了した人材はフィリピンから出国し、日本到着時に入国審査官より入国条件が適していると判断された場合は入国が許可され、特定技能の在留資格を得ます。

以上が、基本的な流れです。
但し、国内から採用する場合と現地から採用する場合に、人材の確保ルートの点で多少の違いがあるため、以下で解説していきます。

国内から採用の場合

国内で人材を確保する場合、主に技能実習生としての期間を終えたものに加え、既に特定技能として就労している人材を採用できます。 特定技能には転職の自由があるため、人材によっては更に好条件を希望して転職先を検討しているものも多く、常に有利な就労先を探している状態です。 これらの人材を採用するにあたり、最大のメリットは既に特定技能としての査証(ビザ)を有している点です。故に大幅な手続きの手間と期間を短縮できるため、受け入れ企業にとって魅力的な人材と言えます。

但し、これらの人材を希望する企業が多く存在し、競争率が高いため費用面での負担が大きくなる傾向にあります。そのため、希望する人材を発掘するのは極めて困難で、長期計画として検討していただくことが必要です。 特定技能を専門に扱う人材派遣会社や、登録支援機関と継続的にパイプを繋いで対処していくことで発掘できる場合がありますので、一つの方法として認識しておくことをオススメします。

現地から採用の場合

現地から採用の場合は、上記ステップでの手続きとなります。国内から採用の場合に比べ手続きに相当の労力と費用を要しますが、希望の人材を発掘できる可能性が高くなります。 フィリピン人の多くは現地での就職活動に難航し、海外での就労を視野にいれていることが一般的になっているため、情報交換も活発です。 人材確保のルートとして主に利用されているのは、特定技能を専門に扱う人材派遣会社と送出し機関です。上記2つのルートは依頼する先によって、掛かってくる費用に大差があるため、根気よく複数の見積もりを検討することをオススメします。

安全衛生面で日本はフィリピン人からの評価が高く、就労先として希望されているのが現状で、日本企業からの求人は必ずと言っていいほどに見られています。現在、国内で希望する人材が思うように発掘できず、現地からの採用を検討する企業が多い現状です。

フィリピン人材に関わる各機関の名称と役割

・フィリピン人材に関わる各機関の名称と役割

前章の各ステップで見ていただいた通り、特定技能を利用してのフィリピン人材には、様々な機関への申請が必要になります。この章では、特に混同してしまいがちな各機関の名称について、整理しながら見ていきましょう。

DOLE・POEA・POLO

DOLEは、フィリピン労働雇用省(Department of Labor and Employment)です。フィリピンにおける労働及び雇用に関する規制や監督を実施する官庁になります。 主な職務は、労働者の保護であり、外国企業に雇用されているフィリピン人労働者に関連した問題が発生した場合は、労働者保護の観点から受け入れ企業に対し厳しい判断を下します。

POEAは、フィリピン海外雇用庁(Philippine Overseas Employment)です。送り出し政策の中心機関にあたり、海外で働くフィリピン人の権利を守ることが目的です。 POEAは現地に設けられ、人材を海外へ送り出す前に就業先を審査する機関です。受け入れ企業としてフィリピン人を雇用する場合、必ずこのPOEAの審査を受けます。

POLOは、駐日フィリピン共和国大使館海外労働事務所(Philippines Overseas Labor Office)にあり、POEAやDOLEの出先機関です。 また、POLOは海外各国に拠点があり、日本には駐日フィリピン大使館と在大阪総領事館の中にあり、受け入れ企業はPOEAから審査を受けるためにPOLOに出向く必要があります。

送出し機関(エージェント)

送り出し機関とは、POEAで手続きする際の代行や、現地で人材を確保する役割を担う機関です。(エージェンシーと呼ぶこともあるため、同意語であると認識しましょう)

この機関は必ずPOEAの認定を受けていることが必須となるため、注意が必要です。事前に認定を受けているか把握した上で、契約を結ぶことが必要です。 また、送出し機関により費用面での負担が変わってきますので、1社のみに限らず複数社を検討し、十分に比較した上で決めるようにしていただくことをオススメします。 登録支援機関の中には、複数社の送出し機関と付き合いがあるところも多く、事前に相談して決めることや、値段交渉を依頼することも一つの方法です。

登録支援機関

特定技能制度を利用する際に受け入れ企業は雇い入れた人材に対し、義務的支援を実施する必要があります。支援内容は多岐にわたり、本業と平行していくには相当な労力を要しますので、企業に代わってそれらの支援を担うのが、登録支援機関になります。
主な義務的支援内容は、以下の通りです。

  • 事前ガイダンス
  • 出入国時の送迎
  • 生活確保・生活に必要な契約支援
  • 生活オリエンテーション
  • 公的手続き等の支援
  • 日本語学習の機会の提供
  • 相談・苦情への対応
  • 日本人との交流促進
  • 転職支援(受け入れ企業の都合による解雇の場合)
  • 定期的な面談・行政機関への通報

このように、様々な支援が義務として課せられますので、現状は登録支援機関を活用される企業が多いです。
また、登録支援機関の業務として、雇い入れに関する各種手続きの代行もしています。特に、はじめての雇用の場合は複雑な業務となるため、登録支援機関に委託する受け入れ企業が多い現状です。

【必見】採用までの時短ポイント

【必見】採用までの時短ポイント

採用の決定から実際に雇い入れるまでの期間には、相当の時間と労力が必要になるため、可能な限り短縮できる部分は検討が必要となります。

各ステップにおける主な手続き内容が申請と交付のため、一気に時間短縮は難しいところですが、【STEP7】から【STEP9】は同時並行で実施が可能です。 過去にフィリピン人材を雇用した際に行った例として、在フィリピン日本国大使館にて査証(ビザ)の発行を申請している間に、健康診断と出国前オリエンテーションを実施するという流れになります。 このように少しでも短縮できる部分にトライすることで、長い期間の手続きによる労使の負担を軽減するためにも取り入れていきたいところです。

注意点はここ!フィリピン独自ルール

注意点はここ!フィリピン独自ルール

特定技能制度を利用してのフィリピン人材の雇用には、フィリピン独自のルールが存在します。他国と比べ手続きがひと手間多く、費用の面でも準備が必要となりますので、事前に把握が必要です。

POEAとPOLO

特定技能制度を利用してフィリピン人を採用する場合、直接雇用は原則禁止です。2017年8月より、POEAでの手続きをする際は、現地で認定を受けた送り出し機関を介することが義務化されています。 また日本国内での手続きには、POEAの出先機関であるPOLOを介して実施しますので、この2つの機関の手続きが複雑と感じることが多い現状です。

そこで、おススメしたいのが登録支援機関の利用です。登録支援機関は義務的支援の代行はもちろんのこと、初期にかかるこれらの手続きも請け負っておりますので、大いに活用したいところです。 費用の相場は登録支援機関によりますが、20万円程度が一般的となっています。

採用にかかる費用

POEAへの各種申請を実施するにあたり、現地で送出し機関を経由するため、費用が発生します。相場は送出し機関によって異なり20~30万円です。こちらの費用は送出し機関へ納める金額になります。 さらに、人材の雇用後にも送出し機関へ管理費として、月額1万円程度の費用が発生します。送出し機関によっては年額20万円と、年間で費用を設定している場合もあるため、事前に把握が必要です。

送り出し機関の管理費に関しては正式な金額の定めはなく、交渉次第で費用を抑えられる場合もあるので、登録支援機関に依頼して値下げ交渉にトライするのも一つの方法です。 これらの費用は、他国の人材を雇用する場合には発生せず、フィリピン人材を採用される際にのみかかります。いわゆるフィリピン独自ルールにあたるものです。

まとめ

・まとめ

ここまで、特定技能制度でフィリピン人を採用するステップと注意点について解説しました。他国に比べ、費用や手続きで負担がかかると感じた点も多くあると思います。 しかし、実際のところフィリピン人材の雇用はベトナム、インドネシアに続き3番目に多く今後も増加傾向にあるのが現状です。 その理由として考えられるのは、フィリピン人の国民性にあると感じます。フィリピン人の国民性は明るく元気な部分に加え、真面目で企業に対し忠誠心を持っており、雇用する立場にとって安心感を与えるものです。 多少の手間や費用が掛かるとしても、雇用するに値するものがそこには存在していると感じる受け入れ企業も多く、非常に喜ばれていると言えます。ご検討の際は、この点も判断材料の一つとして役立てていただければ幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事を書いたライター
栢分(かやわけ)ジュリアス

栢分(かやわけ)ジュリアス

滋賀県在住。高等学校卒業後、食品会社・建設会社・保険/金融業にてキャリアを形成。建設会社では取締役に就任し、2017年より技能実習生と特定技能外国人の受け入れを担当。2022年、WEBライターとして本格的に活動を開始。現在、特定技能制度と金融に関する記事をメインにお届けしています。