【2024年】特定技能12業種(旧14業種)の職種一覧と要点を解説

【2024年】特定技能12業種(旧14業種)の職種一覧と要点を解説

特定技能

「現場が人手不足で困っている……」
「外国人労働者の採用を検討したい!」
上記のような悩みは、新たな在留資格である「特定技能」で解決できます。

「特定技能」は、2019年4月に新設された新たな在留資格で、12の業種(旧14業種)で外国人の就労が可能となったため、外国人労働者を採用したいと考えている企業にとっては人材確保のチャンスといえます。 在留資格「特定技能」の基礎知識から12業種・14職種と要点、採用の方法まで詳しく解説していきますので参考にしてみてください。

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特定技能とは

「特定技能」とは、各省庁が選んだ日本国内で人手不足が深刻と認められる特定産業分野12業種(旧14業種)において、即戦力となる外国人材の就労が可能になった在留資格です。 2019年4月に創設され、日本企業にとって働き手不足解消が期待できます。

特定技能外国人を採用するメリット

「特定技能」は、外国人労働者が幅広い業務に従事できることが大きな特徴です。 単純労働に就労できる資格は、永住者などの身分である在留資格のみだったため、人材が少なく獲得が難しいことが現状でした。 しかし、「特定技能」は学歴や関連業務の経験を求められないため、外国人材の就労がしやすいこともあり人材確保が容易になります。

特定技能で就労可能な12業種

特定技能で就労可能な12業種

「特定技能」の対象業種は、国内で十分な人材を確保できないとされ、特定産業分野に指定されている以下の12種です。

  • 介護
  • ビルクリーニング業
  • 素形材産業・産業機械・電気電子情報関連製造業(2022年に統合)
  • 建設業
  • 造船・舶用工業
  • 自動車整備業
  • 航空業
  • 宿泊業
  • 農業
  • 漁業
  • 飲食料品製造業
  • 外食業

下記に、各分野の概要と現状について詳しく解説していきます。

介護

「介護」は、介護に関連する業務を行える在留資格ですが、訪問系サービスを行うことはできません。 介護業界は高齢化の影響が大きい分野であり、利用ニーズが増加していくことが確定的ですが、すでに深刻な人材不足である問題を抱えており改善する見込みがありません。 厚生労働省の資料では、75歳以上の人口の割合は1990年には5%未満ほどでしたが、2016年には13.3%となっており、今後も増加する傾向が続く見込みです。

(参考:厚生労働省老健局|介護予防・健康づくりと保険者機能の強化)

ビルクリーニング業

「ビルクリーニング業」は、建物の内部を清掃・整備する業務で、場所、部位などの違いに応じた洗剤や用具を、用途に応じた使い分けなど専門知識が必要です。 ビルクリーニング業界の現状は人手不足で、厚生労働省の資料では平成29年度の有効求人倍率が2.95倍と高いうえに、就労者のうち65歳以上の高齢者が37.2%と働き手が高齢化の傾向にあります。

(参考:厚生労働省|ビルクリーニング分野について)

特定技能1号の対象業種を14から12へ再編

2022年4月26日の閣議決定により、特定技能制度の受け入れ対象業種が14業種から12業種に再編されました。
対象業種が減少したのではなく、既存の3業種が統合される形となっています。
具体的には、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業の3業種が統合することになり、【素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業】となりました。

素形材産業

「素形材産業」は素形材を部品・部材などに加工する分野です。 金属などの素材に熱や圧力で加工したものを「素形材」と呼びます。 素形材産業の業界も人材の労働力不足は問題となっており、経済産業省の資料では人手不足が経営課題とした企業は、大企業で41.9%、中小企業で42.2%と回答した割合が高く、また、企業規模に関わらず人材育成・能力開発も課題です。

(参考:経済産業省|デジタル技術の進展とものづくり人材育成の方向性)

産業機械製造業

「産業機械製造業」は、事務所や工場内で使用される産業用の機械(農業、工業、木工機械など)を製造する分野です。 2022年3月末時点で受け入れ人数が6,021人で、2023年までの受け入れ見込み人数5,250人を超えたため、2022年4月1日より新たな在留資格認定証明書は発行停止しています。 製造業は外国人労働者の受け入れが盛んで、技能実習生から特定技能への切り替えが増えていることが要因です。

(参考:出入国在留管理庁|特定技能「産業機械製造業分野」における在留資格認定証明書交付の一時停止措置等について)

電気・電子情報関連産業

「電気・電子情報関連産業」は、電子機器の組み立てやメッキ・機械加工などの分野です。 電気・電子情報関連産業は人手不足が深刻で、業界全体の有効求人倍率は2017年時点で2.75倍です。 上記の中でも最も求人難となっているのが、プラスチック製品・製造工(3.70倍)、製品包装作業員(3.60倍)、金属溶接・溶断工(2.50 倍)です。 労働需要の拡大にテクノロジーの進歩が追いついていないことが現状といえるでしょう。

(参考:経済産業省|素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針)

建設業

「建設業」は、建築大工や内装、左官などの仕事の分野です。 型枠工、左官、とび工、鉄筋工、電工、配管工のすべての職種において人手不足で、特に土木における型枠工の不足は最も厳しい状況であるといえます。 また、特定技能外国人が多く活躍しているのは「建設機械施工」や、「鉄筋施工」といった区分で、試験は国内と海外ではフィリピン・ベトナムで行われており、今後はさらに実施国・地域が拡大していくと見込まれています。

造船・舶用工業

「造船・舶用工業」は、船を製造するためのさまざまな業務において特定技能外国人を受け入れることができる分野です。 造船・舶用工業分野は、瀬戸内海や九州などの地方で、労働力の減少や少子高齢化が進んだことにより人手不足が生じていることが原因で、特定技能人材の受け入れが始まりました。

自動車整備業

「自動車整備業」は、自動車の日常点検整備・定期点検整備・分解整備などを行う分野です。 日本自動車整備振興会連合会の発表では、平成31年の自動車整備士の平均年齢は45.5才と高齢化の傾向にあり、今後は整備士不足が増加していくと予想できます。

(参考:日本自動車整備振興会連合会|平成31年度 自動車分解整備業実態調査結果の概要について)

航空業

「航空業」は、空港グランドハンドリングと航空機整備があります。 空港グランドハンドリングは航空機の誘導・移動、貨物の搭降載などが業務で、航空機整備は航空機のメンテナンスなどが業務です。 航空業は、訪日外国人の増加で飛行機の整備などを行う人手不足が課題でした。 コロナ渦で人材不足は落ち着いていますが、航空業界はアフターコロナに向けての改善が急務といえるでしょう。

宿泊業

「宿泊業」は、ホテルや旅館でフロント、企画・広報、接客に従事する分野です。 宿泊業は、地方部の宿泊施設が減少し首都圏のホテルが増加傾向にあります。 宿泊業界はIT化などで運営面の生産性向上が課題であり、また、コロナ渦の影響で宿泊業界自体の採用が滞っており、多くの外国人がこの分野に就労できていないことが現状です。

農業

「農業」は、耕種農業・畜産農業の2つがあり、それぞれ別の試験が設けられています。また、派遣が認められている点が特徴です。 後継者不足による高齢化が課題の農業は、農業従事者の68%が65歳以上、49歳以下は11%で、今後も農業分野で雇用労働力は増加する見込みにあるが、人手不足が改善できる見通しがないと内閣府は問題視しています。 そのため、農業は外国人労働者数が増えており徐々に受け入れが増加している分野です。

(参考:内閣府|農業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針)

漁業

「漁業」は、漁業・養殖業の2つに区分されている分野で、各々で試験が用意されています。 高齢化と漁業・水産業の生産性の低さが漁業の課題であり、人手不足の要因は収入の低さも関係していると考えられ、地方の漁村では50代が若手とされています。 また、漁業は同じ地域でも対象魚種・漁法等によって、繁忙期・閑散期が異なるという特徴があり、規模が小さな漁業経営主体が多いため、派遣が認められていることが特徴です。

飲食料品製造業

「飲食料品製造業」は、酒類を除いた飲食料品の製造・加工・安全衛生と、飲食料品製造全般に従事できる分野です。 飲食料品製造分野は、オートメーション化に限度があり、HACCPに沿った衛生管理への対応が求められているため、人手が足りない傾向にあります。 飲食料品製造業で働く外国人は12業種中で1番多く、技能実習生からの移行も増加傾向です。

※HACCPとは、食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入などを把握したうえで、原材料の入荷・製品の出荷の全工程で、危害要因を除去または低減させるために製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です

外食業

「外食業」は、飲食物調理・店舗管理・接客など多くの業務ができる分野です。 外食業は対面でのコミュニケーションを要することから、完全なオートメーション化が難しい分野といえます。 外食業を含む「宿泊業、飲食サービス業」は人手不足が続いており、人手不足の解消とインバウンドへの対応も必要とされることから、特定技能外国人の受け入れが積極的です。 しかし、コロナ渦の影響を受け、特定技能試験に合格した多くの外食分野の特定技能外国人が在留できていないことも現状です。

特定技能は1号・2号の2種類がある

在留資格「特定技能」には、「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類がありますので、以下に紹介します。

特定技能1号

特定技能1号は、特定産業分野に属する知識または経験に必要なレベルの技能を習得して、業務に従事する外国人向けの在留資格です。 技能レベルをはかるための試験があり、対象は上記で紹介した12業種で、在留期間の上限は5年となっています。

特定技能2号

特定技能2号は、特定技能1号を修了したあとに移行することが可能で、特定産業分野で熟練した技能を必要とする業務に従事する外国人向けの在留資格です。 現在は「建設業」「造船・船舶工業」の2分野のみで、許可された実績はなく、2022年度中に分野が増設される予定です。 特定技能2号の場合は在留期間に上限がなく、要件を満たすことで家族帯同もできます。

特定技能外国人に対して行う義務

特定技能外国人に対して行う義務

特定技能を用いて採用したい日本企業が満たすべき要件は2つあります。

  • 賃金等の条件確認
  • 支援計画書の作成

上記は特定技能外国人に対して行う企業の義務ですので、下記の詳細を参考にしてみてください。

賃金等の条件確認

特定技能制度は人手不足を解消するために新設された在留資格なので、安価な労働力を得る目的で活用するものではありません。 したがって、賃金規定がある場合は、特定技能外国人には同等の経験を持っている日本人と「同等以上の条件」で雇用する必要があります。 また、すでに同じ職場で技能実習生の採用がある際は、特定技能1号が技能実習2号修了と同程度の技能を持っているとみなされるため、技能実習生2号よりも特定技能外国人の給与を高く設定しなければいけませんので注意しましょう。

支援計画書の作成

在留資格「特定技能」を活用して外国人労働力を受け入れる場合、定着してもらう目的で支援計画書の作成が必要となります。

登録支援機関を活用して支援計画の作成・実施

特定技能外国人を雇用する企業は、入管法上では「特定技能所属機関(受入機関)」と呼ばれ、業種別に設けられた協議会に加盟することが義務です。 また、法令遵守や支援できる能力・体制を有するなど、特定技能所属機関となるための要件や基準が定められています。 たとえば、特定技能所属機関は特定技能外国人に対し、住居の契約時に連帯保証人となるなど複数の支援が義務づけられているのです。 ただし、受け入れる企業はこの支援業務を登録支援機関に委託することができます。

登録支援機関とは、特定技能外国人を受け入れる企業の代わりに支援計画を作成するなど、特定技能外国人と特定技能所属機関の活動を安定的で円滑に行なうことを支援する機関です。 つまり、登録支援機関に委託すると支援業務を自社で行う必要がないため、企業が登録支援機関に支援を委託しているケースが多いです。 登録支援機関を選ぶ際は、支援内容だけでなく、外国人材が定着するための独自の支援サービスも行っている企業がありますので、確認してみるといいでしょう。

特定技能外国人を採用する方法

特定技能外国人を採用する代表的なパターンを下記に3つ紹介していきます。

「技能実習」から在留資格「特定技能」に移行する

「技能実習」から在留資格「特定技能」への変更ができるため、技能実習生に移行手続きをさせることで可能です。

在留資格「留学」から「特定技能」に切り替えて採用する

留学生は「技術・人文知識・国際業務」への変更を考える方が多い傾向にありますが、取得には学歴などとの関連性が必要なため、変更が難しい場合があります。 その点、特定技能は学歴などとの関連性は求められないので、取得しやすいといえるでしょう。

海外現地から外国人を採用

コロナ渦の影響で、現在のところこのケースは活発ではないですが、将来的に主流になっていく可能性が高いです。
海外現地の人材を採用する場合は、現地で試験実施があるか確認しておくとよいでしょう。

まとめ

この記事では、在留資格「特定技能」の基礎知識から12業種・職種を中心に、

  • 特定技能外国人を採用するメリット
  • 特定技能は1号・2号の2種類がある
  • 特定技能外国人に対して行う義務支援における登録支援機関の活用
  • 特定技能外国人を採用する方法

上記の内容を解説しました。
国内の少子高齢化にともなう労働力不足で、特定技能はこれから増加すると考えられます。 特定技能外国人は従事できる職種・業務が幅広いため、さまざまな業種の企業にとって戦力にしやすいです。 この機会に、特定技能外国人の採用検討をしてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いたライター
央谷樹

央谷樹

フリーランスWebライター。 大学で建築学を専攻し、デザイナー専門学校グラフィックデザイン学科を卒業。 広告業界でグラフィックデザイナー、リテール業界に転職後はSVとして従事。 異業種の知見を活かした「マーケティング・マネジメント・人材・労務」と「広告・美術・不動産・住宅」の記事執筆を得意とする。 マーケティング力から「企業のオウンドメディアコラム」のディレクションも担当する、企画から執筆まで扱うオールラウンダー。 「顧客満足の視点」から「正確な情報収集・マーケティング分析・やさしい文章」で、事業に相乗効果を生み出すパートナーとして活動中。